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【というわけで一日置いて後半戦】

そもそも、ことの発端は副部長だったのです。
部内……否、あるいは、『校内で最もカルシウムの摂取量が少ない男』という、素晴らしく不名誉な異名を極秘裏に持つ、我が裏生物部の副部長。通称サワサワ(笑)。

ふと一ヶ月見ないと思えば腕に包帯巻いていたり、また違う月には反対の腕を骨折していたりと、生傷の絶えない彼ですが(裏で、実は家の周りを取り囲む野生の猿に襲撃されているのではないかという説もある)、そんなサワサワが、部員勧誘をする直前に生物室(本来部活動は標本室で行なっていますが)で行なわれていた合併についての会議の最中、私に向けて呟いた一言が悪夢の始まりだったのです。

―――否、その前に、もう既にナイトメアは我々の知らない所で動き出してしまっていたのかも知れません。なぜなら眼鏡ちゃんたちが所用を済ませて会議に参加するその前に、

どっからどう考えても
その場に似つかわしくないカンガルーが、
人間に混じって話し合いに出席していたのですから。


ええ。それはもうどこからどう見てもカンガルー。オーストラリアに住んでいる、有袋目カンガルー科、お腹の袋で子供を育てることで有名な、プリティー且つチャーミング、そして更にワイルドな大陸の野生動物カンガルー。

明らかにおかしいですよね?生物室における裏生物部+天文部の会議でカンガルーが発生する条件が殺人的に理解不能です。しかも滅亡的に場にそぐわない。

確かに、そぐわないと言われれば眼鏡ちゃんとて、会議中に空腹感に耐えかねてモシャモシャとパンを食べていましたよ?不謹慎なことは詫びますよホント。マジですみませんでしたな感じなんですけれど。

ですけれど!!

それにしたってカンガルーはあり得ないでしょう生物室入った瞬間目玉飛び出るかと思いましたもん(そんなにか)!!
会議にカンガルーなんて、そぐわない感で言えば、カレーにプリンぐらいそぐわない上ありえないですよ?寧ろラーメンにイチゴショート、食パンに味噌!!

そんな、絶望的理解不能な状況下。無論私たちもそんな中、ただ漠然とカンガルーを容認するわけにはいきませんから、ちゃんと理由を訊き出すことにしましたよ。人間は知ることに対して快感を覚える生き物ですからね。知らないという感覚は、ある種の不快感とも似ているそうですし、キチンと説明は受けましたよ。その上でキッチリカンガルーの存在を認めましたとも。

なんでも、本日決行される部員勧誘の際のビラ配布時に、少しでもインパクトを求めてこのカンガルー姿でビラを配り歩くそうで。カンガルーに興味をそそられた新一年生を一網打尽にして一挙に部員増員よグハハハハ(悪人な笑い方で)という、なんともアレな作戦らしく、その為のカンガルーだったそうです。いわば客寄せパンダみたいな感じですね。よくよく見ればちゃんと中に人が入ってました。っていうか顔の部分はフードでした(当たり前です)。

さて。
そんな感じで疑問も解消、無事に会議も終わり、「さあ部員勧誘だ」な雰囲気が生物室に漂い始めた頃なんですが。

ふと、先ほどまで白衣をまとって策士な微笑みを浮かべていた(?)部長がフラリとどこかへ消えてしまいます。ギワ子様が、「あれ?すずめは?」とかキョロキョロ探していたんですが見つからず。まとっていた白衣だけが、副部長サワサワに託されて残っておりました。

どうやら、先日買いそびれた教科書を購入しに行ったご様子のすずめ部長。「部長ちゃんと進級できたんだねー」な会話が一部で紡がれる中でふと、サワサワが言いました。

「コレLLって書いてあるけど絶対ちっちゃいってー」

………今思えば、あのとき反応さえしていなければあんなことにはなっていなかったのかも知れません。ていうか十中八九なっていなかったでしょう。そう、

その一言が惨劇の始まりだったのです。

若干袖の短げな白衣を着こんで不満を垂れている副部長サワサワ。ふと何の気なしに私、眼鏡ちゃんが振り返り「あー、ホントだー」だとか言いました。

ええ、ここまではナチュラルな会話でしょうよ。服のサイズが合ってなくて「ちょっとでかいよねコレ」「うん」的な会話なんて確実に世界各国どこにでも転がっているありふれた会話でしょうさ。
そして勿論、その後、サワサワ副部長が「ちょっとコレ着てみなってば!」とか言いながら私に白衣を手渡したのも、流れ的に考えれば自然だったのでしょう。試着感覚ってヤツですか、ためしに着せてみたってそれだけだったんですよ。そうだったはずなんです。
なのに。

「サイズ滅茶苦茶あってねえ!!」

………ええ。そうです。そうでしょうとも。
サイズが絶望的にあってないのも無理はありません。
なぜなら私、眼鏡ちゃんは女子にしたってすさまじく小柄な体格です。小さい順で並んだら問答無用で一番前が確定な奇跡の140センチ台

そんな眼鏡ちゃんにLLサイズの白衣なんて着せたらそれはもう、面白いぐらいにあってないこと間違い無しに決まってんじゃないですか!
あれですよ、袖から指すら出てないし、裾は床に引きずりそうな勢い。
なんでしょうね、恐いほどの可哀想な子オーラが全開だったんですよ本当に。寧ろ見ていて痛々しい。

散々その場にいた皆に笑いものにされ、まあ、それはまだ一万歩譲って良しとしましょう。千歩じゃ譲りきれませんが一万歩退いてまだ容認しようではありませんか。サイズがあってなかったのは事実だったんだし。
で。

納得いかないのはその後です。

皆がひとしきり笑い終えた後、眼鏡ちゃんは苦笑を貼り付けつつ白衣を脱ごうとしたわけですよ。こんだけ笑えば十分だろうと。
所が、まだそれだけでは満足できていなかった悪魔が、ふとそんな眼鏡ちゃんを見て呟きました。

「そのままビラ配ればウケるんじゃない?」

………。
あの時、一瞬にして夜叉に変わったその場の部員たちの目を、私は卒業するまで忘れることはないでしょう。
寧ろ生物室に振りまかれるソレは、ある種殺気にも似た冷気。万物の温度を絶対零度まで叩き落してしまえそうな冷たさを孕んだ空気が、眼鏡ちゃんの背筋を一瞬にして凍らせていきます。

……ヤバい!!

大音量で警告を轟かせる本能。刹那の間に高速回転する思考。

逃げなければ殺られる!!

普段愚鈍極まりない眼鏡ちゃんはその瞬間、音速を超えた気がしました。

………気のせいでした。

逃げようとした途端後ろからリス姉のホールドが入り、あえなく捕縛された眼鏡ちゃん。その後、カンガルーとサワサワ副部長に捕まり、目の前には笑顔のリス姉+トーコちゃん。
その時の二人の笑顔は、書道部が使う墨なんかよりも、
一千倍は黒かったです。
(断言)


で。


悪夢のような劇的ビフォーアフターが、悪魔な笑顔のお二人の手によってクリエイトされた、その後。
哀れなスケープゴート、生贄羊の眼鏡ちゃんは。

死んだ魚の目をした魂の抜け殻へと成り果てました。

ただでさえ全国の皆様からの惜しげのない憐憫の眼差しを買うこと間違いなしの、サイズの合っていない白衣姿に、プラスアルファとして小道具のヘアピンとネクタイが追加装着。まるでどこぞの漫画に出てくる若き天才博士のような、ある意味でコスプレとも言い得る恥ずかしさ二百点満点の格好。

……ええ、そりゃあ見ている側は楽しいかもしれませんけどね!!
眼鏡ちゃんだって一応人間ですよ!?立派なホモサピエンスですよ!?それなのに、ああそれなのにそれなのに!いくら「立てばお荷物座れば無能、歩く姿は足手まとい」な私だとしてもですよ?羞恥心ぐらいは一人前に備えてるって話ですよ!!

何?え?知らなかった?あはははは

なら、今この瞬間にそのご立派な脳味噌に叩き込んどいて下さい。(笑顔)

一体何の虐めですかていうか私今ココで何してんのよなんで白衣なんか着て皆の笑い者にされてるのさ意味分かんねぇぜド畜生とか、どす黒ーい呪詛が脳内をエンドレスで巡り続ける眼鏡ちゃんですが、そんな眼鏡ちゃんはにはお構いなし。

半ば放心する私を差し置いて、「カンガルーとコレ(私を指差して)でビラ配ればインパクトは最強じゃん!」的な会話が周囲で繰り広げられています。この世界インパクトだけが全てじゃないよ皆。

千尋の谷底に問答無用で突き落とされた子ライオンの心境で明々後日の方向を見つめて死んでいる眼鏡ちゃんを他所に、いつの間にかご帰還なされた部長も混ざって既に生物室は絶望と爆笑の渦巻く混沌の世界。ギワ子ちゃんの失笑も合わさって色々大変なことになっていたんですが、あれよあれよと言う間に部長の、

「よし、生徒指導室に異装届けを貰いにいこう!」

という一言で、滅茶苦茶強引に舞台は生徒指導室前へと移動。
その前に部長を女装させようとかサワサワ副部長にスカートはかせようとか色々あったんですけどね。

カンガルーとブカブカ白衣が人の群れに混じって廊下をあるく姿は既に

仮装パーティでした。ハロウィンですかこん畜生!!

さてさて。
すれ違う通行人に幾度と無く後ろ指を指されつつも、生徒指導室の鉄の扉(違います)の前に到着した裏生物部コスプレ団体一同。ビラを片手に扉を開け放ち、その場にいた先生に部長が開口一番「異装届けをお願いしたいんですが!」と威勢良く言い放ち、私とカンガルーを指差すと……

「アホか!アカンに決まっとるやろうが

こんなモン!!」


生徒指導の某先生の一喝により、裏生物部、「インパクトで部員を集めよう!~カンガルーと白衣で摩訶不思議パラダイス大作戦~」は見るも無残に、打ち砕かれました。

……っしゃあ!!

皆さん、服装における厳しいルールなんていうのは、別に悪いことばかりではありません。現にこうして一人の学生の精神的なメンタル面を無事に保護してくれました。そう、この厳格なルールによって、尊い一つの命が奇跡的に守られたのです。

規律よ、汝に幸あれ。

と、いうことで、今回の「新一年生仮登校日」における部員勧誘は、無事制服での実行により、何事もなく終わっていきました。
よかった……。本当に良かった……!!(感涙)
部員勧誘の為に精神とか余裕で崩落しそうな眼鏡ちゃんの胃の壁面は、なんとか穴凹まみれになる悲劇を回避できたのでありました。
めでたしめでたし。

それで、ですね。
配られたビラを嫌な顔一つせず受け取ってくださった新入生の方々、心より合格を祝福します。長きにわたる戦い、お疲れ様でした。

勝ち取った高校生活を存分に楽しんでください。その際に、我が裏生物部への入部も「高校生活を楽しむ手段の一つ」と考えていただければ幸いです。

配布されたビラを見てクスリとでも笑ってくださった方、男女を問わず奮って入部してやって下さい。見学しに来て下さるだけでも構いません。ハムスターやらなんやらが待ってますよ♪

………ま、とか言ったってありがちな勧誘文句なんですけどね!(待て)

ではでは、兎にも角にも。前編に比べて非常に質量アップの後半でした。前編で誤字脱字を大量に発見して恥ずかしくなった自分です。
ここまで読んでくださったアナタ、本当にありがとうございます!

拙い文章失礼致しました。眼鏡ちゃんでした。


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